fantom_zona’s diary

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改変Notch受容体による細胞間コミュニケーション

この前出た、"Engineering Customized Cell Sensing and Response Behaviors Using Synthetic Notch Receptors"の紹介を軽くします。

先行研究に関する言及なんかには気が向いたら書き加えます。

概要

Notch受容体の細胞内/外のドメインをカスタムすることで、他の細胞表面のリガンドを検知し、細胞内での転写へと変換することができるような受容体(synNotch)の作成をした。

基本的なアイデア

Notch受容体は下の図にあるように、細胞外のリガンドと結合すると、細胞内ドメインがちぎれてそのまま転写因子として働きます。このNotch受容体の受容後の切断の機能を保持しつつ、リガンド選択性と転写因子活性を操作できないかということを著者たちは考えたようです。

そこで、著者たちは、切断を制御している部分だけを残して、あとはscFvと適当な転写因子に入れ替えてやりました。

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頑張って色々やったのだと思うのですが、図の灰色の部分を残せばうまくいくことが多いと発見したようです。

結果

色々たくさん実験をして、細胞表面のリガンドだけを検知すること、自分の細胞表面にあるリガンドはsynNotchの活性を抑制すること、EMTや細胞分化誘導を引き起こせる程度には活性を持ち得ること、複数のsynNotchを同時に使えること、それらを用いて論理回路が作成できることなどを示しています。(全部書くのはめんどくさくなったので割愛)

以上に加えて、この論文の最後の実験なのですが、空間的なパターンの形成の実験を著者たちは行っています。

実験では、MDCK細胞というイヌの腎尿細管上皮の細胞株からsenderとrecieveeという二つの種類の細胞を作成しています。senderでは細胞表面にGFPを付け、recieverではGFP→CD19&mCherry, CD19→BFPという回路を入れておきます。

すると、senderの周囲に、recieverがmCherryとCD19を発現します。このとき、自分の表面に発現したCD19をsynNotchは検知しません。したがって、mCherryとBFPが同時に発現することはありません。次に、mCherry発現細胞のさらに外側の細胞にBFPが発現します。このようにして二重のリング状にパターンが形成されるはずです。

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まとめ&感想(というかこれが一番書きたかった感じある)

イデアとしては、前からいろんな人がやりたがってたのだと思うが、これはかなりすごい。ここで書かなかったデータ見ても、人工的な受容体でこんなに綺麗にデータが取れるのは驚異的。とくに最後のパターン形成。しかもたぶん汎用的。

リボスイッチとかプロモーターとかはツールとしてかなり集まってきていると思うが、これで、CARみたいに細胞内の転写ネットワークにとどまることなく細胞間コミュニケーションまで広げられそうな感じ?ちなみに同一号でCARの特異性向上のためにsynNotch使ってます。

そういえば、two-component sysytemだかでも細胞内ドメインがちぎれて転写因子になるやつあった気がするけど、忘れたので知ってる人教えてください。

 

合成生物学おもしれええええ!!!(結局これ!)